Webアプリ開発を依頼する前に準備するもの|要件メモの書き方とテンプレート

業務用Webアプリや社内ツールの開発を相談するとき、「仕様書がないと相談できないのでは」と身構える必要はありません。最初の相談に完璧な仕様書は不要です。ただ、いくつかの情報を簡単なメモにしておくだけで、見積もりまでの話は格段に早く進みます。そのまとめ方を、コピーして使えるテンプレートと記入例つきで紹介します。

最初の相談に、仕様書は要りません

システム開発というと、詳細な仕様書を用意しなければならないと考える方もいます。しかし、小規模な業務用Webアプリや社内ツールであれば、最初から仕様書を作る必要はありません。

開発会社が最初の相談で知りたいのは、技術的な仕様ではなく、次のような業務と目的に関する情報です。

  • どんな困りごとを解決したいのか
  • 誰が、どんな場面で使うのか
  • おおよそ、どんな画面や機能が必要そうか
  • いつ頃までに、どのくらいの予算で実現したいのか

こうした情報は、発注する会社の中にしかありません。逆に、使う技術やデータベースの設計などは、相談しながら開発会社が提案するものです。要件メモは、この「社内にしかない情報」を簡単に整理するためのものと考えてください。

要件メモにまとめておきたい8つの項目

1. 誰が使うのか

社内スタッフ、顧客、会員、取引先など、利用者の種類とおおよその人数を書きます。「入力する人」「確認する人」「見るだけの人」のように役割で分けると、権限の検討にも役立ちます。

2. 何を解決したいのか

今の業務で困っていることと、Webアプリで実現したいことを書きます。「顧客管理アプリがほしい」ではなく、「担当者の不在時に、顧客との過去のやり取りが分からず対応が遅れる」のように、困っている場面を具体的に書くのがポイントです。

3. 必要な機能

登録、検索、予約、通知、集計、CSV出力、権限管理など、必要だと思う機能を箇条書きにします。優先度(必須/あれば望ましい/後回しでよい)をつけておくと、範囲を絞る際に役立ちます。

4. 必要な画面

一覧、詳細、入力、管理画面など、必要そうな画面を書き出します。手書きの画面イメージや、スライドで作った簡単な図があれば、写真やスクリーンショットで添付するとより伝わりやすくなります。

5. 参考サービス

画面や使い勝手のイメージに近いサイトやアプリがあれば、URLと「どの部分が参考になるか」を添えて書きます。「この画面の一覧の見せ方が近い」「この予約の流れを参考にしたい」など、具体的に書くと認識がそろいやすくなります。

6. 公開希望日

いつまでに使い始めたいかを書きます。繁忙期を避けたい、年度の切り替えに合わせたい、イベントに間に合わせたいなど、日付の理由があれば添えておきましょう。

7. 予算感

おおよその範囲で構いません。予算感が分かると、その範囲で実現できる構成を提案しやすくなります。決まっていない場合は「未定」で問題ありません。

8. 補助金・助成金の利用有無

「未定」「検討中」「予定あり」「なし」のいずれかを書きます。補助金を使う場合は、発注のタイミングや見積書の形式に影響するため、検討中の段階でも伝えておくと安心です。詳しくは補助金を使ってWebシステム開発を依頼する前に確認すべきことをご覧ください。

コピーして使える要件メモのテンプレート

次のテンプレートをコピーして、分かる範囲で埋めてみてください。決まっていない項目は「未定」と書いておけば大丈夫です。

【要件メモ】

1. 誰が使うか
 ・
 ・おおよその人数:

2. 解決したいこと(今困っていること)
 ・
 ・

3. 必要な機能(◎必須 ○あれば望ましい △後回しでよい)
 ・
 ・

4. 必要な画面
 ・
 ・

5. 参考サービス(URLと参考にしたい点)
 ・

6. 公開希望日(理由があれば)
 ・

7. 予算感
 ・

8. 補助金・助成金の利用(未定/検討中/予定あり/なし)
 ・

9. その他(今使っているツール、気になっていることなど)
 ・

記入例:問い合わせ対応の管理ツールの場合

考え方をつかんでいただくための記入例です(特定の企業の事例ではありません)。

【要件メモ】

1. 誰が使うか
 ・社内の受付担当2名、対応担当5名、責任者1名
 ・すべて社内スタッフ。社外の人は使わない

2. 解決したいこと(今困っていること)
 ・問い合わせがメールとExcelに分散していて、対応漏れが起きる
 ・誰が対応中か分からず、二重に返信してしまうことがある
 ・責任者が対応状況を確認するのに時間がかかる

3. 必要な機能
 ◎ 問い合わせの登録(受付担当が入力)
 ◎ 担当者の割り当て
 ◎ ステータス管理(未対応/対応中/完了)
 ◎ 対応履歴の記録
 ○ 未対応が一定日数続いたら通知
 △ 月ごとの件数集計

4. 必要な画面
 ・問い合わせ一覧(ステータス・担当者で絞り込み)
 ・問い合わせ詳細(対応履歴つき)
 ・登録・編集画面

5. 参考サービス
 ・特になし。今使っているExcelの見本を添付します

6. 公開希望日
 ・来年の4月から使いたい(新年度の体制に合わせるため)

7. 予算感
 ・未定。まずは規模感を知りたい

8. 補助金・助成金の利用
 ・検討中

9. その他
 ・将来的には顧客管理ともつなげたいが、今回は問い合わせ管理のみ

この程度のメモがあれば、必要な画面の数、機能の複雑さ、権限の種類などが分かるため、開発会社は規模の見通しを立てやすくなります。費用がどのような要素で決まるのかは、業務用Webアプリ開発の費用はどう決まる?で解説しています。

要件メモと一緒に用意しておくとよい資料

要件メモに加えて、次のような資料があると、さらに話が早く進みます。すべてそろえる必要はなく、手元にあるものだけで十分です。

  • 今使っているExcelやスプレッドシート:項目名と数行の見本データがあれば、必要な項目や計算ルールが分かります
  • 紙の帳票や申込書:写真やスキャンで構いません
  • 今使っているツールの画面のスクリーンショット:不満な点に印をつけておくと伝わりやすくなります
  • 手書きの画面イメージ:きれいに描く必要はありません。ノートに描いたものの写真でも役立ちます
  • 業務の流れのメモ:「誰が、何をして、次に誰に渡すか」を箇条書きにしたもの

資料を共有するときの注意

最初の相談の段階では、顧客の氏名や連絡先などの個人情報、社外秘の数値などは伏せるか、架空の値に置き換えてから共有することをおすすめします。項目の構成と見本の数行があれば、内容を把握するには十分です。

要件メモを書くときのコツ

「機能」より「困っている場面」から書く

必要な機能を考えるのが難しい場合は、困っている場面を書くところから始めてください。「月末に3つのファイルから数字を集めて集計するのに半日かかる」と書けば、必要な機能は相談の中で一緒に考えられます。

頻度や量を添える

「問い合わせが多い」より「1日に10〜20件程度」、「データが多い」より「顧客は約800件」のように、おおよその数字を添えると、規模を判断しやすくなります。正確でなくて構いません。

今回やらないことも書く

将来的に実現したいが、今回は対象外にしたいことがあれば、「今回はやらない」と明記しておきましょう。範囲の認識がそろい、見積もりの精度も上がります。

迷っていることは、迷っていると書く

「既製のツールで足りるのか分からない」「スマートフォンでも使えるようにすべきか迷っている」など、判断に迷っている点もそのまま書いてください。その点を中心に相談を進められます。

書き方の改善例

同じ内容でも、書き方によって伝わる情報の量は大きく変わります。よくある書き方と、改善した書き方を比べてみましょう。

項目伝わりにくい書き方伝わりやすい書き方
解決したいこと業務を効率化したい週に一度、3つのExcelから数字を集めて報告書を作っており、毎回半日ほどかかっている
利用者社員が使う営業4名が外出先のスマートフォンで入力し、事務2名が社内のパソコンで確認する
機能管理機能がほしい案件を担当者とステータスで絞り込める一覧と、期限が近い案件の通知がほしい
参考サービスよくある予約サイトのようなもの参考URLのサービスの予約画面のように、カレンダーから空き枠を選ぶ流れにしたい(決済機能は不要)
公開希望日なるべく早く来月末の展示会で申込を受け付けたいので、その2週間前には確認を終えたい

伝わりやすい書き方に共通しているのは、「誰が」「どんな場面で」「どのくらい」が含まれていることです。完璧な文章である必要はありません。業務の実態が分かる具体的な言葉で書くことを意識してみてください。

相談したあとの流れ

要件メモを送ったあと、一般的には次のような流れで話が進みます。

  1. 内容の確認:開発会社がメモを読み、制作可能か、確認したい点は何かを整理する
  2. 質問・ヒアリング:メールや打ち合わせで、不明点や範囲について確認する
  3. 範囲と進め方の提案:最初の版に含める範囲や、段階的な進め方を提案する
  4. 見積もり:範囲が見えた段階で、内訳つきの見積もりを提示する

要件メモは、この最初の確認と質問の段階を短くするためのものです。メモがあることで、「何を作りたいのか」を一から説明する手間が省け、より具体的な相談に時間を使えるようになります。

社内で事前に確認しておきたいこと

要件メモとは別に、社内で次の点を確認しておくと、相談後の進行がスムーズになります。

  • 開発会社とのやり取りの窓口は誰か
  • 仕様の最終判断をするのは誰か
  • 完成したものを確認(テスト)するのは誰か
  • 社内の承認(稟議など)にどの程度の期間がかかるか

社内で決めておくべきことの詳細は、社内ツール開発を外注する前に決めておくべき7つのことで解説しています。また、今のExcel管理をWebアプリにしたい場合は、Excel管理をWebアプリ化する進め方もあわせてご覧ください。

Tailboneのお問い合わせフォームとの対応

Tailboneのお問い合わせフォームでは、要件メモの内容を次の欄に書いていただけます。

フォームの項目書いていただく内容
ご予算「予算感」に近いものを選択(決まっていなければ「未定・相談したい」)
作りたいもの要件メモの「誰が使うか」「解決したいこと」を中心に
現在決まっていること「必要な機能」「必要な画面」など、決まっている範囲で(要件メモをそのまま貼り付けても構いません)
希望納期「公開希望日」とその理由
補助金・助成金未定/検討中/予定あり/なし から選択
参考サービス・参考URL「参考サービス」のURLと参考にしたい点
その他ご相談内容迷っていること、今使っているツールなど

すべての項目が埋まっていなくても大丈夫です。お送りいただいた内容を確認したうえで、担当者からメールでご連絡し、制作可能かどうか、進め方、追加で確認したい点をお伝えします。目的も内容も決まっていない状態では納期や完成形のお約束はできませんが、だからこそ最初の整理を一緒に行います。

よくあるご質問

要件メモは、どのくらいの分量があればよいですか?

分量に決まりはありません。この記事のテンプレートの項目を、それぞれ数行の箇条書きで埋めていただければ十分です。長い文章よりも、短くても具体的な内容(誰が、何を、どのくらいの頻度で、など)のほうが、規模の見通しを立てやすくなります。

決まっていない項目は、空欄のまま送ってもよいですか?

問題ありません。「未定」「検討中」と書いておいていただけると、どこから一緒に整理すればよいかが分かります。決まっていない項目を無理に埋めるよりも、迷っている点をそのまま書いていただくほうが、相談は進めやすくなります。

社外秘の資料を送っても大丈夫ですか?

最初のご相談の段階では、個人情報や機密性の高い情報は伏せた形で共有いただくことをおすすめします。Excelなどは、項目名と数行の見本データがあれば十分に内容を把握できます。詳細な資料の共有が必要になった場合は、その段階で取り扱いを相談させてください。

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