古い社内ツールを作り直すべきか?改修・刷新を相談する前の判断基準

十年近く使ってきた社内ツールが、最近よく止まる。作った担当者はもう社内にいない。新しい業務に合わせて直したいが、どこを触ればよいか分からない――長く使われてきた仕組みほど、こうした悩みを抱えがちです。改修で乗り切るか、思い切って作り直すか。判断のための材料と、その集め方を紹介します。

4つの選択肢

選択肢向いている状況注意点
そのまま使う大きな問題がなく、業務も変わっていない止まったときに直せる体制があるかは確認しておく
改修する問題が一部に限られ、中身を理解して直せる人がいる改修を重ねるほど、全体が複雑になりやすい
作り直す直せる人がいない、土台が業務や環境に合わなくなった費用と期間、データの移行と切り替えの計画が必要
既製ツールに移る業務が一般的な型に近くなった業務をツールに合わせる必要がある

改修で十分なケース

  • 困っていることが、特定の画面や機能に限られている
  • ソースコードやサーバーの情報が手元にあり、中身を理解できる人(社内または外部)がいる
  • 使っている技術や動いている環境が、今後もしばらく使い続けられる
  • 業務の流れ自体は、作った当時から大きく変わっていない

この場合は、全体を作り直すより、問題のある部分を直していくほうが、費用も期間も抑えられます。

刷新を検討したいサイン

  • 中身を理解して直せる人がいない(作った人が退職した、依頼先と連絡が取れない)
  • 使っている技術や動いている環境の提供・サポートが終わる、または終わっている
  • 小さな修正にも、想定以上の時間と費用がかかるようになった
  • 業務の流れが変わり、ツールの外で手作業の回避策が増えている
  • スマートフォンから使えない、社外の人と共有できないなど、今の働き方に合わない
  • よく止まる、遅いなど、業務に支障が出ている

特に上の2つは、問題が起きたときに誰も対応できないという意味で、優先度の高いリスクです。止まってから対応すると、業務への影響が大きくなります。

相談前に棚卸ししておきたいこと

改修か作り直しかを判断するには、今のツールの状態を把握することが出発点です。分かる範囲で次の情報を整理しておくと、相談が進めやすくなります。

  1. 使っている機能の一覧:実際に使われている画面と機能、使われていない機能
  2. 困っていること:止まる、遅い、直せない、業務に合わないなど
  3. 手元にある情報:ソースコード、サーバーやドメインの管理情報、設計資料、作った会社の情報
  4. データの状況:どこに保存されているか、書き出せるか
  5. ツールの外の手作業:ツールでできず、Excelや紙で補っている作業

手元に情報がない場合でも、実際の画面と使い方から、必要な機能を整理することはできます。マクロ入りのExcelが中心の場合はExcelマクロ(VBA)の属人化をどう解消する?もご覧ください。

作り直すなら「同じものを作らない」

ポイント:今のツールは「実際に使われてきた仕様書」

長く使われてきたツールには、業務のルールが詰まっています。一方で、すでに使われていない機能や、当時の制約を回避するために追加された機能も含まれています。作り直しは、使われている機能を見極め、今の業務に合わせて整理し直す機会です。すべての機能を同じように再現する必要はありません。

切り替えの進め方

  • 小さく作って並行運用する:中心となる機能から作り、今のツールと並行して試す
  • データの移行を計画する:書き出せるデータ、変換が必要なデータを確認する
  • 切り替え日を決める:並行運用を長引かせず、切り替え後の旧ツールの扱いも決める
  • 引き継げる形で残す:次に同じ問題が起きないよう、ソースコードや資料、アカウントを自社で持てる形にする

最後の点は特に重要です。作り直しのきっかけが「直せる人がいない」ことなら、新しい仕組みでは同じ状況を繰り返さないよう、外注したシステムを自社で持ち続けるためにで挙げた点を確認しておきましょう。データの移行についてはExcelからWebアプリへデータを移行するときの注意点も参考になります。

改修と作り直しの費用の比べ方

改修と作り直しの費用を比べるときは、目先の金額だけでなく、今後数年の見通しも含めて考えます。

比べる観点改修の場合作り直しの場合
初期の費用小さく済むことが多い大きくなりやすい
今後の修正の費用古い作りのままだと、修正のたびに時間がかかる今の業務と技術に合わせて作るため、修正しやすくなる
止まるリスク古い環境に依存している場合は残る新しい環境に移すことで小さくできる
移行の手間ほとんどないデータの移行と、使い方の切り替えが必要

改修を繰り返して費用が積み上がっている場合や、止まるリスクが業務に大きく影響する場合は、作り直しのほうが数年単位では合理的になることがあります。

作り直しの間も業務を止めない

作り直しを決めたら、新しい仕組みが完成するまでの間、今のツールで業務を続けられるようにしておくことが大切です。

  • 今のツールが止まったときの応急的な対応方法を確認しておく
  • データのバックアップを取り、取り出せる状態にしておく
  • 新しい仕組みは、中心となる機能から順に作り、並行して試す
  • 切り替え日を決め、並行運用の期間を長引かせない

相談のタイミング

古いツールの問題は、止まってから対応しようとすると、業務への影響が大きくなります。まだ動いているうちに、棚卸しと方針の検討を始めておくと、改修か作り直しかを落ち着いて判断できます。

作り直しの費用をどう考えるかは、業務用Webアプリ開発の費用はどう決まる?や小規模Webアプリの保守・運用費はどう考える?もあわせてご覧ください。

改修か作り直しか、判断の材料を一緒に集めます

今のツールの画面や使い方、困っていること、手元にある情報を伺えれば、改修で足りるか、作り直す場合はどの機能から始めるかを一緒に整理できます。既存システムの改善のご相談も、内容によって対応可能です。情報が揃っていない場合でも、実際の画面と使い方から必要な機能を洗い出すところから始められます。

よくあるご質問

作った会社がもう対応してくれない場合でも、相談できますか?

相談は可能です。まずは今のツールの構成、ソースコードやサーバーの情報が手元にあるか、データを取り出せるかを確認するところから始めます。情報が少ない場合でも、実際の画面と使い方から、必要な機能を整理することはできます。

作り直しの間、今のツールは使い続けられますか?

多くの場合、新しい仕組みが完成して確認が終わるまでは、今のツールを使い続けます。切り替え日を決めて、データを移行してから新しい仕組みに移る流れが一般的です。

今のツールと同じ機能をすべて作る必要がありますか?

ありません。長く使われてきたツールには、すでに使われていない機能や、回避策として追加された機能が含まれていることがよくあります。作り直しは、本当に必要な機能を見直す機会でもあります。

あわせて読みたい

コラム一覧へ戻る