Excel・紙からの移行
ExcelからWebアプリへデータを移行するときの注意点|移行前のデータ整理
新しいWebアプリが完成したのに、切り替えが進まない。理由を聞くと「Excelのデータがうまく移せない」――Webアプリ化の現場で、意外とよく起きることです。人が目で見る分には問題のないExcelのデータも、システムに取り込もうとすると、表記の違いや形式のばらつきが一気に表に出てきます。移行の前に整理しておきたい点と、進め方をまとめます。
Excelデータでよく見つかる問題
| 問題 | 具体例 | 整理の方法 |
|---|---|---|
| 表記ゆれ | 同じ取引先が「株式会社」付き、「(株)」付き、社名のみ、と別々に書かれている | 統一する表記のルールを決めて揃える |
| 重複 | 同じ顧客が別の行に2回登録されている | 残す情報を決めて1件にまとめる |
| 結合セル | 見た目を整えるために複数のセルを結合している | 結合を解除し、各行に値を入れる |
| 1つのセルに複数の情報 | 「電話:03-…/担当:山田」のように1セルにまとめている | 項目ごとに列を分ける |
| 形式のばらつき | 日付が「2026/10/1」「10月1日」「R8.10.1」と混在 | 形式を統一する |
| 空欄と「なし」 | 空欄、「なし」「-」「不明」が混在 | 意味ごとに扱いを決める |
| ファイルの分散 | 担当者ごと、年度ごとに別ファイル | 1つの表に統合し、出どころを記録する |
これらは、人がExcelを見て使う分には大きな問題になりません。しかし、システムでは「同じものは同じ表記」でないと、検索、集計、重複のチェックが正しく働きません。
移すデータの範囲を決める
移行の手間を減らす効果的な方法は、移す範囲を絞ることです。
- 進行中・取引中のデータだけを移し、完了済みのデータは移さない
- 直近の一定期間(例:過去数年分)のデータだけを移す
- 移さない過去データは、参照用のExcelとして保管する
- 使っていない列(項目)は移さない
「念のため全部移したい」と考えがちですが、古いデータほど表記のばらつきが大きく、整理の手間がかかります。新しい仕組みで本当に参照する必要があるデータかどうかを、業務の視点で判断しましょう。
移行の進め方
- 移すファイルと範囲を決める:どのファイルの、どの期間・どの列を移すか
- 項目の対応表を作る:Excelの列と、新しい仕組みの項目の対応を一覧にする
- 整理のルールを決める:表記の統一、重複の判断、空欄の扱いなど
- データを整理する:ルールに沿って、Excel上で整える
- 試し取り込みをする:一部のデータを取り込み、画面で正しく表示されるか確認する
- 本番の移行と切り替え:切り替え日を決め、最新のデータで移行して運用を移す
特に5の試し取り込みは省略しないことをおすすめします。実際に画面で見てみると、「並び順がおかしい」「検索で出てこない」といった問題に気づけます。
切り替えのタイミングに注意する
移行中も業務は動いている
データの整理や移行に時間がかかっている間も、Excelでの業務は続いています。整理を始めた時点のデータと、切り替え日のデータには差が出ます。切り替え日の直前に最新のデータで移行し直すか、切り替え日以降の差分を手で登録するか、事前に決めておきましょう。
在庫のように「今の数」が重要なデータは、切り替えのタイミングで棚卸しを行い、正しい数を初期値として登録する方法もあります。詳しくは在庫管理をWebアプリ化するには?をご覧ください。
移行の判断は社内で、作業は分担して
データの整理には、業務を知っている人にしかできない判断が含まれます。
- どの表記を正式なものとするか
- 重複したデータのうち、どちらの情報を残すか
- 「なし」と空欄は、同じ意味として扱ってよいか
こうした判断のルールを社内で決め、変換や取り込みの作業を開発会社が手伝う、という分担が現実的です。顧客データの移行については顧客管理をExcelからWebアプリに移行するタイミングと進め方、Excel管理のWebアプリ化全体についてはExcel管理をWebアプリ化する進め方で解説しています。
項目の対応表の作り方
移行の準備で特に役立つのが、Excelの列と新しい仕組みの項目を対応させた表です。開発会社とのやり取りも、この表をもとに進めると認識がずれにくくなります。
| Excelの列名(例) | 新しい仕組みの項目 | 整理のルール |
|---|---|---|
| 会社名 | 顧客名(必須) | 「株式会社」は省略しない |
| 担当 | 担当者(選択式) | 社員一覧の名前に揃える |
| 電話/FAX | 電話番号・FAX番号 | 1セルに2つある場合は分ける |
| 備考 | メモ | そのまま移す |
| 旧コード | (移さない) | 使っていないため不要 |
上は書き方の例です。「移さない」と決めた列も表に残しておくと、後から「あの情報はどこへ行ったのか」と迷わずに済みます。
移行後に確認したいこと
- 件数が合っているか(移す前のExcelの行数と、移した後の件数)
- 日付や金額が正しく変換されているか(いくつかを抜き出して照合する)
- 重複のまとめが正しく行われているか
- 検索や絞り込みで、想定どおりのデータが表示されるか
- 担当者が、自分の担当分のデータを確認して違和感がないか
最後の点は、数字の照合では見つからない問題を見つけるのに役立ちます。日々そのデータを扱っている担当者は、違和感にすぐ気づきます。
移行を急がないほうがよい場合
データの量が多く、表記のばらつきも大きい場合は、移行のために新しい仕組みの利用開始が大きく遅れることがあります。その場合は、新しい仕組みを先に使い始め、過去のデータは必要になったものから順に移す、という進め方も選択肢です。
マクロで加工しているデータを移す場合は、Excelマクロ(VBA)の属人化をどう解消する?もあわせてご覧ください。
移行まで含めて計画します
Webアプリの開発では、データ移行を最後に回すと切り替えが遅れがちです。Tailboneでは、開発の範囲と並行して、今のExcelを見ながら移す範囲と整理が必要な箇所を確認します。移行の作業量はデータの状態によって変わるため、範囲を決めたうえで個別にお見積もりします。
よくあるご質問
データの整理は、開発会社に任せられますか?
整理の作業そのものを依頼できる場合もありますが、どの表記に統一するか、どちらの情報を残すかといった判断は、業務を知っている社内でしかできません。判断のルールを社内で決め、変換の作業を開発会社が手伝う、という分担が現実的です。
移行の作業には費用がかかりますか?
データの量と整理の必要性によって作業量が変わるため、見積もりに含まれているかを確認しておきましょう。データがきれいに整っているほど、移行の作業は小さくなります。
移行後に、Excelの元データは削除してよいですか?
切り替え後しばらくは、参照用として保管しておくことをおすすめします。移行漏れや変換の誤りが見つかったときに、元のデータと照らし合わせられます。保管期間と、保管場所へのアクセス権限もあわせて決めておきましょう。