発注・外注の進め方
システム開発の相見積もりで比較すべきポイント|金額以外に見るべきこと
複数の開発会社から見積もりを取ったら、金額が倍以上違った。どれが妥当なのか分からない――相見積もりでは、こうした状況がよく起こります。金額の差には理由があり、その理由を読み解かないまま安い方を選ぶと、後から追加費用や手戻りに悩まされることがあります。相見積もりで本当に比べるべきなのは、金額の前にある「中身」です。
相見積もりの前に、依頼内容をそろえる
相見積もりで最も大切なのは、すべての依頼先に同じ情報を渡すことです。依頼の仕方がばらばらだと、各社が異なる前提で見積もるため、金額を比べても意味がありません。
- 同じ要件メモ(目的、利用者、必要な機能・画面、時期、予算感)を渡す
- 今使っているExcelや帳票など、参考資料も同じものを共有する
- 質問を受けて追加で伝えた情報は、他社にも共有する
- 見積もりの提出期限と、提出してほしい形式(内訳の粒度など)をそろえる
要件メモのまとめ方は、Webアプリ開発を依頼する前に準備するもので紹介しています。
金額より先に比べたい5つの項目
1. 含まれている画面・機能
見積もりに、どの画面・機能が含まれているかを一覧で比べます。ある会社は管理画面を含め、別の会社は含めていない、といった違いは珍しくありません。一覧が出ていない見積もりは、内訳の提示を依頼しましょう。
2. 前提条件
発注者が用意するもの(文章、画像、データの整理など)、確認のスケジュール、対応するブラウザや端末など、見積もりの前提になっている条件を確認します。前提が違えば、同じ金額でも中身は異なります。
3. 含まれていないもの
データ移行、サーバーの設定、外部サービスの契約や利用料、公開後の保守などが、見積もりに含まれているかを確認します。含まれていないものは、別途費用がかかる可能性があります。
4. 修正と仕様変更の扱い
初回納品後の修正は、どの範囲まで、いつまで対応してもらえるのか。範囲を超える変更が出た場合、どのように相談し、どう見積もるのか。ここが曖昧だと、後から費用が増える原因になります。
5. 成果物と権利
ソースコードの納品の有無と権利の扱い、サーバーやドメイン、外部サービスのアカウントの名義も比較のポイントです。依頼先を変更する可能性を考えると、総額以上に重要な項目です。詳しくは外注したシステムを自社で持ち続けるためにで解説しています。
そのまま使える比較表のひな形
見積もりを受け取ったら、次の項目ごとに各社の内容を書き出すと、違いが見えやすくなります。表計算ソフトに項目を写し、列を会社ごとに分けて使うのがおすすめです。
| 比較項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 見積もり金額(開発費) | 税込・税抜、分割の有無を揃えて比べる |
| 含まれる画面・機能 | 要件メモの項目と一つずつ照らし合わせる |
| 含まれないもの | データ移行、保守、外部サービスの設定・利用料など |
| 前提条件 | 発注者が用意するもの、確認のスケジュール |
| 初回納品までの期間と起点 | 相談からか、要件確定からか |
| 修正対応の範囲 | どこまで、いつまで対応してもらえるか |
| 仕様変更の扱い | 範囲を超える変更の相談と見積もりの方法 |
| 公開後の保守 | 依頼できるか、範囲と費用の考え方 |
| ソースコード・アカウント | 納品の有無、権利、名義 |
| 毎月かかる費用 | サーバーや外部サービスの費用の見込み |
書き出してみて空欄が多い会社は、確認が必要な点が多いということです。金額が安くても、空欄の部分が後から追加費用になる可能性があります。
金額に差が出るときに考えられる理由
範囲や前提をそろえても、金額に差が出ることはあります。考えられる理由は次のとおりです。
- リスクの見込み方:曖昧な部分の作業をあらかじめ見込んでいるか、後で相談する方式か
- 工程の手厚さ:設計書の作成、テスト、打ち合わせにかける時間の違い
- 体制:1人で対応するか、複数人のチームで対応するか
- 技術の選び方:既存の仕組みを活用するか、一から作るか
どれが正しいということではなく、自社の案件にとって必要な水準かどうかで判断します。金額の背景が分からない場合は、遠慮なく理由を質問してみましょう。費用が決まる仕組みは業務用Webアプリ開発の費用はどう決まる?で解説しています。
質問への答え方も比較材料になる
見積もりについて質問したときの答え方からも、依頼先の進め方や相性が見えてきます。
- 専門用語に頼らず、分かりやすく説明してくれるか
- 「この機能は最初は不要かもしれない」といった、範囲についての提案があるか
- できないこと、含まれないことを正直に伝えてくれるか
- 返答までの時間は、開発中のやり取りでも許容できる範囲か
金額の低さだけで選ばない
見積もりの金額が低いことは、それだけでは選ぶ理由になりません。範囲や前提が狭い可能性、テストや確認の工程が薄い可能性もあります。比較表の空欄を埋め、総額と中身の両方で判断することをおすすめします。
見積もり依頼の文面の例
相見積もりを依頼するときは、次のような項目を文面に含めておくと、各社から比べやすい形で見積もりが届きやすくなります。
【見積もり依頼の文面(項目の例)】 1. 依頼の概要(何を、何のために作りたいか) 2. 添付資料(要件メモ、今使っているExcelの見本など) 3. 希望する時期と、その理由 4. 予算の目安(決まっていれば) 5. 見積もりに含めてほしい内容 ・画面・機能ごとの内訳 ・含まれないもの(データ移行、保守など) ・初回納品後の修正対応の範囲 ・公開後に毎月かかる費用の見込み 6. 回答の期限 7. 補助金の利用予定の有無
5のように、見積もりの形式を指定しておくと、各社の見積もりを同じ表に書き出しやすくなります。
比較したあとの進め方
- 比較表の空欄を埋める:分からない項目は各社に質問して確認する
- 前提をそろえて比べる:範囲の違いを差し引いて、総額と中身を比べる
- 候補を絞って詳しく話す:進め方や担当者との相性も確認する
- 選ばなかった会社にも連絡する:見積もりへの協力にお礼を伝える
最後の点は、今後また相談する可能性を考えても大切なことです。発注先を決めたら、契約の形(請負か準委任か)と、作業範囲・修正の範囲の書き方も確認しておきましょう。考え方はシステム開発の契約形態とは?で解説しています。
依頼先と長く付き合う視点
業務用のWebアプリは、公開後も改善や保守が続くことが多いため、依頼先とは長い付き合いになりがちです。見積もりの比較では、今回の開発の金額だけでなく、公開後の相談のしやすさ、改善の要望への対応の仕方も判断材料に含めましょう。
Tailboneの見積もり
Tailboneでは、固定の料金表は設けず、必要な内容に合わせて個別にお見積もりしています。着手前に画面・機能などの制作範囲を明確にし、初回納品後は事前に合意した範囲内で、実際に使える状態まで修正対応します。合意範囲を超える大きな仕様追加は、作業前に内容と費用を別途ご相談します。比較検討中の段階でも、範囲や前提についてのご質問にお答えします。
よくあるご質問
相見積もりは何社くらいに依頼するのがよいですか?
決まりはありませんが、比較の手間を考えると2〜3社程度が現実的です。多くの会社に依頼すると、それぞれとのやり取りに時間がかかり、比較そのものが負担になります。依頼先の種類(受託開発会社、フリーランスなど)を変えて比べるのも一つの方法です。
相見積もりを取っていることを、依頼先に伝えるべきですか?
伝えて問題ありません。比較検討していることが分かっていれば、依頼先も前提や範囲を明確にした見積もりを出そうとします。伝える場合は、他社の金額を引き合いに値引きを求めるより、範囲や前提の違いを確認するために使うほうが建設的です。
補助金を使う場合、相見積もりは必要ですか?
制度によっては、一定金額以上の発注で複数社の見積もりが求められることがあります。要否や条件は制度・公募回によって異なるため、最新の公募要領・事務局資料で確認してください。