顧客管理をExcelからWebアプリに移行するタイミングと進め方

「前回この顧客と何を話したか、担当者に聞かないと分からない」。Excelの顧客台帳で管理していると、顧客や担当者が増えるにつれて、こうした場面が少しずつ増えていきます。顧客管理をWebアプリに移すべきタイミングと、移す場合に最初に作るべき機能、Excelデータの移行で気をつけたい点をまとめました。

Excelの顧客管理で起きやすい問題

Excelでの顧客管理には、手軽さや自由度の高さという利点があります。一方で、次のような問題が起きやすい面もあります。

  • ファイルが分散する:担当者ごと、部署ごとに顧客リストが作られ、同じ顧客の情報が複数のファイルに存在する
  • 対応履歴が残らない:「いつ、誰が、どんなやり取りをしたか」を記録する欄が足りず、メールや個人のメモに散らばる
  • 同時に編集できない:複数人が同じファイルを更新しようとすると、上書きや編集の待ちが発生する
  • 表記がそろわない:会社名や住所の書き方が人によって違い、検索や集計がうまくいかない
  • 見せたくない情報まで見えてしまう:ファイル単位でしか共有範囲を管理できない

こうした問題は、顧客数が少なく、担当者が1〜2人のうちは目立ちません。しかし、事業が成長するほど影響が大きくなっていきます。

Webアプリへの移行を検討すべきタイミング

次のようなサインが出てきたら、顧客管理の方法を見直すタイミングと考えられます。

顧客対応に関わる人が増えた

営業担当、サポート担当、事務担当など、複数の人が同じ顧客に関わるようになると、情報の共有が重要になります。誰かが更新した情報を、他の人がすぐに確認できる状態が必要です。

担当者の不在や異動で、対応が止まったことがある

「担当者が休みで、前回何を話したか分からない」「異動した担当者から引き継いだが、経緯が分からない」といった経験がある場合、対応履歴を共有できる仕組みの必要性が高まっています。

同じ顧客への重複した連絡や、対応漏れが起きた

情報が分散していると、同じ顧客に別々の担当者から連絡してしまったり、誰も対応していない問い合わせが残ったりします。こうしたミスは、顧客からの信頼に直結します。

顧客情報を取引先や外部の担当者とも共有する必要が出てきた

代理店や外部のパートナーと顧客情報を共有する場合、必要な情報だけを見せる仕組みが求められます。ファイルの共有では、見せる範囲を細かく制御することが困難です。

既製CRMと独自のWebアプリ、どちらを選ぶか

顧客管理の仕組みとしては、既製のCRM(顧客関係管理)サービスを導入する方法と、自社に合わせた顧客管理Webアプリを開発する方法があります。

既製のCRMサービス独自の顧客管理Webアプリ
始めやすさ契約後すぐに使い始められる要件の整理と開発の期間が必要
機能多機能だが、使わない機能も多くなりがち必要な機能だけに絞れる
業務への適合サービスの想定する流れに業務を合わせる自社の業務の流れに合わせて作れる
費用月額料金。利用者数に応じて増えることが多い開発費と運用費。利用者数による増加は構成次第
改善提供元の更新に従う必要に応じて自社の判断で改修できる

既製のCRMは、営業活動の管理を中心に、多くの企業で必要とされる機能を幅広く備えています。業務がその想定に近いなら有力な選択肢です。一方で、「機能が多すぎて現場に定着しなかった」「自社独自の項目や流れが管理できない」といった理由で、シンプルな独自の仕組みを求める企業もあります。どちらが良いかは、業務の内容と、使う人の状況によって判断します。商談の進み具合や営業活動の記録が中心であれば、営業管理・商談管理を自社に合わせて作るには?もあわせてご覧ください。

顧客管理Webアプリで最初に作るべき機能

独自に顧客管理Webアプリを作る場合、最初から多くの機能を盛り込む必要はありません。まずは、Excelで困っていることを解決する機能に絞るのが効果的です。

顧客台帳(一覧・詳細・登録・編集)

顧客の基本情報を一覧で確認し、検索・絞り込みができる画面です。Excelの列にあたる項目を整理し、必要なものだけを残します。会社名や担当者名、ステータスなど、よく使う条件で絞り込めるようにしておくと便利です。

対応履歴

顧客ごとに、いつ、誰が、どんな対応をしたかを時系列で記録する機能です。Excelでは1行に1顧客の形で管理していることが多く、履歴を残すのが難しい部分ですが、Webアプリでは顧客の詳細画面に履歴を積み重ねていく形で管理できます。担当者の引き継ぎや不在時の対応で、特に効果を感じやすい機能です。

担当者の割り当て

顧客ごとに担当者を設定し、「自分の担当顧客」を一覧で確認できるようにします。担当者の変更履歴も残しておくと、引き継ぎの経緯が分かります。

重複登録の防止

新しい顧客を登録する際に、似た名前や同じ電話番号・メールアドレスの顧客がすでに登録されていないかを確認する仕組みです。データの品質を保つうえで役立ちます。

CSV出力

集計や分析をExcelで行いたい場合に備えて、データを書き出せるようにしておくと、移行後もExcelの使い慣れた機能を活用できます。

データの持ち方を決めるときのポイント

顧客管理のWebアプリでは、Excelとは情報の持ち方が変わる部分があります。技術的な設計は開発会社に任せて問題ありませんが、次のような点は業務の視点から判断が必要です。

  • 会社と担当者を分けるか:法人顧客の場合、1つの会社に複数の担当者がいることがあります。会社の情報と、窓口となる人の情報を分けて管理するかどうかを決めます
  • ステータスの定義:「見込み」「商談中」「取引中」「休眠」など、顧客の状態をどう区分するかを決めます。定義が曖昧だと、人によって使い方がばらばらになります
  • 必須にする項目:入力を必須にする項目が多すぎると、登録の手間が増えて使われなくなります。本当に必要な項目だけを必須にするのがおすすめです

Excelからの移行の進め方

  1. 顧客情報がどこにあるかを把握する:Excelファイル、メール、名刺、個人のメモなど、顧客情報の保管場所を洗い出します
  2. 項目を整理する:各ファイルの列を比べ、新しい仕組みで必要な項目を決めます
  3. 表記のルールを決める:会社名、住所、電話番号などの書き方を統一するルールを決めます
  4. 重複を整理する:同じ顧客が複数登録されている場合、どの情報を残すかを決めて統合します
  5. 見本データで試す:一部のデータを取り込んで、新しい画面で問題なく使えるかを確認します
  6. 全データを移行し、切り替える:切り替え日を決め、以降は新しい仕組みで管理します

特に3と4は時間がかかりやすい工程です。移行の直前に慌てないよう、項目の整理と並行して少しずつ進めておくと安心です。Excel管理のWebアプリ化全般の進め方については、Excel管理をWebアプリ化する進め方も参考にしてください。

現場に定着させるための工夫

顧客管理の仕組みは、使われ続けてはじめて価値が出ます。既製のCRMでも独自のWebアプリでも、「導入したが入力されなくなった」という状況は起こり得ます。定着させるためには、次のような点を意識するとよいでしょう。

入力の手間を最小限にする

入力項目が多いほど、日々の記録は面倒になります。最初は必須項目を絞り、選択式にできる項目は選択式にして、短時間で記録できるようにします。項目は運用しながら追加できるので、最初から完璧を目指す必要はありません。

「見る理由」がある画面を用意する

入力するだけで、見返す場面がないと、記録は続きません。「今日連絡すべき顧客」「対応が止まっている顧客」など、毎日の業務で開く理由がある画面を用意すると、自然と使われるようになります。

Excelとの二重管理を続けない

移行後もExcelでの管理を並行して続けると、どちらが正しい情報か分からなくなり、新しい仕組みが使われなくなる原因になります。切り替え日を決めたら、Excelは参照用のみとし、新しい情報はWebアプリに入れるというルールを徹底しましょう。

使う人の声を聞いて改善する

使い始めてから、「この項目は一覧に出ていてほしい」「この順番で入力したい」といった要望が出てきます。小さな改善を重ねることで、現場に合った仕組みに育っていきます。要望は一か所に集め、優先度をつけて対応すると、改修の費用を管理しやすくなります。

個人情報の扱いと権限について

顧客情報には個人情報が含まれることが多いため、Webアプリにする際は、次の点もあわせて検討しておきましょう。

  • 誰がどの顧客の情報を閲覧・編集できるか(権限の範囲)
  • ログインの方法と、退職者のアカウントを停止する手順
  • データのバックアップの方法と頻度
  • データを書き出せる人を限定するかどうか
  • 社外から利用する場合の端末やネットワークの扱い

Excelファイルの場合、ファイルを持ち出せば誰でもすべての情報を見られてしまいますが、Webアプリでは権限によって閲覧の範囲を制御できます。セキュリティの面でも、適切に設計されたWebアプリへの移行には利点があります。

顧客管理のWebアプリ化を相談するときは

顧客管理は、予約、問い合わせ、見積もり、請求など、他の業務と密接に関わっています。最初は顧客台帳と対応履歴から始め、将来的に予約や案件の管理とつなげていくこともできます。予約業務のシステム化については、予約システムは既製サービスと独自開発のどちらを選ぶ?で解説しています。

Tailboneでは、顧客管理システムや、会員ページ・資料共有・進捗共有などの顧客向けポータルの開発を行っています。今お使いのExcelや、困っていることを伺ったうえで、最初に作るべき機能と移行の進め方を一緒に整理します。費用は要件・画面数・機能・連携・運用範囲によって変わるため、内容に合わせて個別にお見積もりします。費用の考え方については業務用Webアプリ開発の費用はどう決まる?をご覧ください。

よくあるご質問

顧客管理は、既製のCRMを使うべきですか?それとも独自開発すべきですか?

既製のCRMで業務が回るなら、まずはそちらを検討するのが合理的です。一方、管理したい項目や業務の流れが独自で、既製のCRMでは使わない機能が多い、必要な機能が足りない、利用者数に応じた費用が負担になる、といった場合は、必要な機能だけを持つ顧客管理Webアプリを作るほうが合うことがあります。

Excelのデータに重複や表記ゆれが多いのですが、移行できますか?

移行は可能ですが、事前の整理が必要です。会社名の表記(株式会社の有無、全角・半角など)や、同じ顧客の重複登録は、移行時によく問題になります。どの表記に統一するか、重複をどう判断するかのルールを決めたうえで、整理してから取り込むのが一般的です。

外出先からスマートフォンで顧客情報を確認できますか?

Webアプリであれば、スマートフォンのブラウザから利用できるように作ることが可能です。ただし、外出先で使う場合は、ログインの方法や、端末の紛失時の対策など、セキュリティ面の配慮もあわせて検討する必要があります。

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