業務別システム
在庫管理をWebアプリ化するには?Excel管理との違いと導入の流れ
帳簿上は10個あるはずなのに、倉庫には8個しかない。月末の棚卸しのたびに、Excelの在庫表と実際の数が合わない――在庫管理の悩みとしてよく聞かれるものです。原因の多くはExcelそのものではなく、記録の仕方と更新のタイミングにあります。在庫管理をWebアプリにするなら、まず「在庫の持ち方」を変えるところから考えます。
Excelの在庫表がずれる理由
在庫の数がずれる原因は、主に次のようなものです。
- 記録の遅れ:出庫した後、事務所に戻ってから入力するため、その間の在庫数が正しくない
- 二重入力・入力漏れ:紙の伝票からExcelに転記する際に、漏れや重複が起きる
- 同時更新:複数人が同じファイルを更新し、上書きで記録が消える
- 在庫数の直接書き換え:「現在の在庫数」のセルを直接書き換えるため、なぜその数になったのかを後から追えない
- 拠点ごとのファイル:倉庫や店舗ごとに別ファイルで管理し、全体の在庫が把握できない
特に注目したいのが4つ目です。在庫数を直接書き換える運用では、数が合わなくなったときに原因を調べる手がかりが残りません。
Webアプリ化で変わる「在庫の持ち方」
在庫管理をWebアプリにする場合、多くは入出庫の履歴を記録し、その合計から現在の在庫を計算する形で作ります。
在庫の考え方の違い
- 入荷・出荷・移動・廃棄を、そのつど1件ずつ記録
- 品目ごとに、記録を合計して現在の在庫を表示
- 数が合わないときは、記録をさかのぼって原因を確認
「いつ、誰が、何を、いくつ動かしたか」が残るため、ずれの原因を追いやすくなります。
このほか、Webアプリにすることで、倉庫や現場からスマートフォンでその場で記録できる、複数拠点の在庫を一つの画面で確認できる、といった変化もあります。
既製の在庫管理システムとの比較
| 観点 | 既製の在庫管理システム | 独自の在庫管理Webアプリ |
|---|---|---|
| 始めやすさ | 契約後すぐに使える | 要件の整理と開発の期間が必要 |
| 業務への適合 | 一般的な入出庫管理に適している | 独自の単位、ロット、管理方法に合わせられる |
| 他業務との連携 | 提供されている連携機能の範囲 | 受注、案件、顧客管理などと一体で作れる |
| 費用 | 月額料金。拠点数や利用者数で変わることが多い | 開発費と運用費 |
一般的な物販の入出庫管理であれば、既製のシステムで十分なことも多くあります。独自の管理単位(ケースとバラの換算、ロットや使用期限の管理など)がある場合や、受注や案件の管理と一体で扱いたい場合は、独自のWebアプリが候補になります。SaaSとの比較の考え方は、自社専用システムは本当に必要?でも解説しています。
最初の版で作る機能と、後回しにできる機能
| 最初の版で検討したい機能 | 後から追加しやすい機能 |
|---|---|
| 品目マスタ(品名、品番、単位、保管場所) | バーコード・QRコードでの読み取り |
| 入荷・出荷・移動・廃棄の記録 | 発注点(在庫が一定数を下回ったら通知) |
| 品目別・拠点別の在庫一覧 | 棚卸し用の画面と差異の記録 |
| 入出庫の履歴の検索 | ロット・使用期限の管理 |
| CSV出力 | 販売管理・会計との連携 |
最初から棚卸しや発注点の管理まで盛り込むと、範囲が大きくなります。まずは「その場で記録できる」「全員が同じ在庫を見られる」状態を作り、運用しながら次の機能を判断するのがおすすめです。
規模と費用を左右するポイント
在庫管理のWebアプリの費用は、要件・画面数・機能・連携・運用範囲によって変わり、正確な金額は個別の見積もりになります。特に影響が大きいのは次の点です。
- 品目数と、品目の種類(単位の換算やロット管理が必要か)
- 拠点・倉庫・保管場所の数
- 記録する人と場所(倉庫でスマートフォンから記録するか、事務所でまとめて入力するか)
- バーコードやQRコードの読み取りが必要か
- 受注、販売、会計など、他の業務との連携
導入までの流れ
- 今の運用を書き出す:入荷から出荷まで、誰が何を記録しているか
- 品目データを整理する:品名の表記ゆれ、重複、使われていない品目を整理する
- 最初の版の範囲を決める:記録・一覧・履歴から始めるのが一般的
- 開発・試用:一部の品目や拠点で試し、記録の手間や画面を確認する
- 初期在庫を登録して切り替える:棚卸しで実在庫を確定し、その数を初期値として登録する
5の初期在庫の登録は、切り替えの成否を左右します。Excelの数字をそのまま移すのではなく、切り替えのタイミングで実地の棚卸しを行い、正しい数から始めるのが理想です。データの整理についてはExcelからWebアプリへデータを移行するときの注意点も参考にしてください。
在庫管理でよくある運用の悩みと対策
記録が後回しになる
忙しい時間帯に入出庫が重なると、記録が後回しになりがちです。スマートフォンから、品目を選んで数量を入れるだけで記録できるようにしておくと、その場で記録しやすくなります。
在庫を勝手に動かす人がいる
記録せずに在庫を持ち出したり、移動したりすると、数字がずれる原因になります。システムだけでは解決できない部分なので、「記録してから動かす」というルールを社内で徹底することが前提になります。
品目の登録がばらばら
同じ品目が別の名前で登録されていると、在庫が分散して見えます。品目の新規登録は担当者を決める、似た名前の品目がある場合は登録時に知らせる、といった工夫が有効です。
在庫管理の相談前に用意したいもの
- 今の在庫表(見本データ)と、入出庫を記録している帳票
- 品目数と、管理の単位(個、ケース、ロットなど)
- 拠点・倉庫・保管場所の数
- 入出庫を記録する人と場所
- 受注・販売・会計など、つなげたい業務
小さく始める範囲の例
品目や拠点が多い場合は、最初からすべてを対象にせず、一つの倉庫や、動きの多い品目から始める方法もあります。
まずは在庫表と入出庫の流れを伺います
品目数や拠点数、記録する人と場所が分かれば、最初の版の範囲と、後から足す機能を判断できます。Tailboneでは、Excelで行っている在庫管理を、現場でその場に記録できる社内ツールとしてWeb化する開発を行っています。
よくあるご質問
バーコードやQRコードで入出庫を記録できますか?
スマートフォンのカメラや専用の読み取り機器で読み取る仕組みを組み込める場合があります。ただし、品目へのラベルの貼付や、読み取り機器の選定など、システム以外の準備も必要です。最初は手入力から始め、運用が固まってから読み取りを追加する進め方もあります。
会計ソフトや販売管理と連携できますか?
連携先の仕様によります。CSVの取り込み・書き出しで済む場合もあれば、APIで連携できる場合もあります。どのデータを、どの頻度でやり取りしたいかを整理したうえで、実現方法を検討します。
既製の在庫管理システムとどちらがよいですか?
業務が一般的な入出庫管理に近ければ、既製のシステムで十分なことも多くあります。独自の単位や管理方法がある、他の業務と一体で管理したい、使う人数が多く利用料がかさむ、といった場合は、独自のWebアプリが合うことがあります。