Excel・紙からの移行
Googleスプレッドシート管理を卒業するべきタイミングと移行先の選び方
Googleスプレッドシートは、ファイルを送り合うことなく全員が同じ表を編集できる便利な道具です。Excelから移行して業務が楽になった、というチームも多いでしょう。ただ、使う人と行数が増えるにつれて、「誰かが列を消してしまった」「関数が壊れて集計が合わない」といった別の悩みが出てきます。スプレッドシート管理を卒業すべきタイミングと、移行先の選び方を整理します。
スプレッドシートが得意なこと・苦手なこと
| 得意なこと | 苦手なこと |
|---|---|
| 複数人での同時編集 | 入力ルールを全員に徹底させること |
| URLでの共有と、ファイル単位の権限 | 行や項目ごとに見せる範囲を変えること |
| 関数を使った柔軟な集計 | データが増えたときの動作の速さと安定性 |
| すぐに使い始められる手軽さ | 誤操作や上書きからデータを守ること |
| グラフや表の作成 | 承認や通知など、業務の流れを管理すること |
Excelから移行すると、同時編集やファイルの散乱といった問題は解決します。一方で、右側の苦手なことは、スプレッドシートでも根本的には変わりません。
卒業を考え始めたいサイン
- 誰かが列や行を消したり、並べ替えたりして、元に戻すのに時間がかかった
- 関数や入力規則が壊れ、集計が合わなくなったことがある
- 見せたくない行(他の担当者の顧客、金額など)まで、全員に見えてしまう
- 行数が増え、開くのや編集するのに時間がかかる
- Google Apps Scriptなどの自動化が増え、作った人しか分からない
- 社外の取引先や顧客にも入力・確認してもらう必要が出てきた
- 「このシートの、この列は触らないでください」というルールが増えた
特に最後のサインは要注意です。シートを守るためのルールが増えているのは、スプレッドシートの自由さが業務のリスクになり始めている証拠です。
移行先の3つの選択肢
1. スプレッドシートの運用を改善する
シートの保護、入力規則、閲覧専用のシートの分離、フォームからの入力への切り替えなどで、多くの問題は軽減できます。利用者が少なく、業務の流れも単純であれば、まずはこの方法を試すのが手軽です。
2. 既製のSaaS・ノーコードツールに移る
顧客管理やタスク管理など、業務が一般的な型に近ければ、既製のツールに移ることで、入力ルールや権限の問題を解決できます。判断の考え方は自社専用システムは本当に必要?で解説しています。
3. 業務用Webアプリにする
業務の中心をスプレッドシートで回していて、独自の項目や流れがある場合、社外の人も使う必要がある場合は、Webアプリとして作り直すことが候補になります。
| 選択肢 | 向いている状況 | 注意点 |
|---|---|---|
| 運用の改善 | 利用者が少なく、業務の流れが単純 | 行単位の権限や誤操作の問題は残りやすい |
| SaaS・ノーコード | 業務が一般的な型に近い | 業務をツールに合わせる必要がある。利用者数で費用が増えることが多い |
| 業務用Webアプリ | 独自の項目や流れがあり、社外の人も使う | 開発費と期間がかかる。要件整理が必要 |
Webアプリにすると何が変わるか
- 入力のルールを仕組みで守れる:選択肢、必須項目、形式のチェックで、表記ゆれや入力漏れを防げる
- 見せる範囲を細かく決められる:担当者は自分の担当分だけ、取引先は自社の分だけ、といった制御ができる
- データを守れる:誤って列を消すといった事故が起きにくく、変更の履歴も残せる
- 業務の流れを管理できる:ステータス、承認、通知などを組み込める
一方で、スプレッドシートのように自由に列を足したり、その場で集計を組み替えたりする手軽さは減ります。自由な分析が必要な部分は、Webアプリからデータを書き出してスプレッドシートで行う、という使い分けが現実的です。
移行の進め方
- シートの役割を書き出す:どのシートで、誰が、何をしているか
- 困っていることを特定する:入力ミス、権限、誤操作、動作の重さのどれか
- Webアプリにする範囲を決める:入力と共有はWebアプリ、集計はスプレッドシートのまま、など
- 項目とデータを整理する:表記ゆれ、空欄、1つのセルに複数の情報が入っている箇所を直す
- 小さく作って試し、切り替える:一部の担当者で試してから全体に広げる
フォームで受けた回答をスプレッドシートで管理している場合は、Googleフォームの申込管理に限界を感じたらもあわせてご覧ください。Excelからの移行全般についてはExcel管理をWebアプリ化する進め方で解説しています。
スプレッドシートを残す部分・移す部分
スプレッドシートからWebアプリに移るときも、すべてを移す必要はありません。それぞれの得意なことを活かして役割を分けると、移行の範囲を小さくできます。
| 業務の部分 | Webアプリに移す | スプレッドシートに残す |
|---|---|---|
| 日々の入力 | 入力ルールを守らせたい、複数人が入力する | 一人が自分用に記録している |
| 共有・閲覧 | 見せる範囲を分けたい、社外の人も見る | 社内の少人数で全員が見てよい |
| 集計・分析 | 毎回同じ形の集計を誰でも見られるようにしたい | その都度、自由に組み替えて分析したい |
Webアプリからデータを書き出せるようにしておけば、自由な分析は引き続きスプレッドシートで行えます。入力と共有をWebアプリ、分析をスプレッドシート、という分担は、移行の初期によく選ばれる形です。
相談の前に用意しておきたいもの
- 今のシートの構成(シートごとの役割、使っている列)
- 共有している相手と、それぞれに見せたい範囲
- 使っている関数やGoogle Apps Scriptの処理の概要
- おおよその行数と、増えるペース
- 困っていること(誤操作、入力ミス、権限、動作の重さなど)
移行のタイミング
年度の切り替えや、担当者の交代、業務量が増える時期の前など、区切りのよいタイミングで移行すると、社内に周知しやすくなります。
シートに残す部分も一緒に考えます
スプレッドシートをすべてやめる必要はありません。Tailboneでは、今のシートの構成と困っていることを伺い、Webアプリに移したほうがよい部分と、スプレッドシートのまま使い続けてよい部分を分けて整理します。
よくあるご質問
スプレッドシートをWebアプリの入力画面として残すことはできますか?
技術的には連携できる場合もありますが、入力ミスの防止や権限管理といったスプレッドシートの課題がそのまま残るため、おすすめできるケースは限られます。当面はスプレッドシートを集計用に残し、入力と共有をWebアプリに移すほうが、効果を得やすいことが多いです。
Google Apps Scriptで作った自動化はどうなりますか?
スクリプトの処理内容を整理したうえで、Webアプリの機能として作り直すのが一般的です。作った人しか中身が分からない状態であれば、Excelマクロと同じく、まずは処理内容の棚卸しから始めます。
スプレッドシートのデータはそのまま移せますか?
CSVなどで書き出して取り込むのが一般的です。ただし、表記ゆれ、空欄、1つのセルに複数の情報が入っているといった状態だと、整理が必要になります。移行前に項目とデータを整理しておくと、切り替えがスムーズです。