自社専用システムは本当に必要?SaaSで足りる場合・足りない場合

業務を効率化しようとしたとき、選択肢は大きく二つあります。既製のSaaS(クラウドサービス)を契約するか、自社の業務に合わせたシステムを作るかです。SaaSは手軽で安く始められる一方、業務に合わない部分があると、その差を人の手で埋め続けることになります。どちらを選ぶべきか、判断するための視点を比較表とあわせて紹介します。

まずはSaaSを検討してよい理由

結論から言うと、多くの業務では最初にSaaSを検討するのが合理的です。理由は次のとおりです。

  • すぐに使い始められる:契約して設定すれば、数日で運用を始められることも多い
  • 初期費用が小さい:開発費がかからず、月額料金で利用できる
  • 保守を任せられる:機能の改善やセキュリティ対策は提供元が行う
  • 他社の運用の知見が反映されている:多くの企業で使われる中で、業務の型が整理されている

会計、勤怠、一般的な顧客管理やタスク管理など、業務の型が比較的決まっている領域では、SaaSで十分なことが多くあります。わざわざ作る必要があるかを、まず冷静に確かめましょう。

SaaSでは足りなくなる典型的なケース

一方で、次のような状況では、SaaSに業務を合わせることが難しくなります。

業務の中心に独自のルールがある

自社独自の料金計算、案件ごとに異なる工程の管理、業界特有の帳票など、事業の強みや業務の核になっている部分がSaaSの想定と合わない場合です。周辺の業務ならSaaSに合わせられても、中心の業務を変えると事業そのものに影響が出ます。

複数のツールの間を人がつないでいる

SaaSを複数組み合わせた結果、ツール間のデータの転記や突き合わせを人が行っているケースです。一つひとつのツールは便利でも、全体としては手作業が残っている状態です。

社外の利用者が多い

取引先や顧客にも使ってもらう場合、利用者ごとに料金がかかるSaaSでは費用が膨らみやすく、画面や権限も社外向けに調整しにくいことがあります。

使わない機能のほうが多い

多機能なSaaSを契約したものの、実際に使っているのは一部だけで、操作が複雑なせいで現場に定着しない、というケースもあります。

判断のための比較表

観点SaaSが向いている自社専用のWebアプリが向いている
業務の型一般的な型に近い業務の中心に独自のルールがある
始める時期すぐに使い始めたい要件の整理と開発の期間を確保できる
利用者社内の限られた人数社外の利用者が多い、人数が増える見込み
変更の頻度業務がまだ固まっていない業務の流れが固まっている
連携SaaS側の連携機能で足りる複数のツールや既存システムをつなぐ必要がある

判断に迷う場合は、SaaSの無料トライアルなどで、実際の業務を一通り試してみるのがいちばん確実です。「合わない部分」が業務の中心にあるのか、周辺にあるのかが見えてきます。

費用は「数年単位の総額」で比べる

SaaSと独自開発の費用を比べるとき、月額料金と開発費の金額だけを単純に比べると判断を誤りやすくなります。次の要素を含めて、数年単位で考えるのがおすすめです。

SaaSの場合に含めたいもの独自開発の場合に含めたいもの
月額料金(利用者やデータの増加を見込む)初期の開発費
上位プランへの移行の可能性サーバーなどの運用費
合わない部分を補う手作業の時間保守・改修の費用
他のツールとの連携にかかる費用将来の機能追加の費用

特に見落としやすいのが、SaaSに合わない部分を人が補っている時間です。目に見える請求額には表れませんが、毎月積み重なる費用です。費用対効果の考え方は、Webアプリ化の費用対効果はどう考える?でも解説しています。

「全部SaaS」か「全部独自開発」かで考えない

実際には、SaaSと独自開発を組み合わせる選択肢もあります。

  • 会計や勤怠など、型が決まっている業務はSaaSを使う
  • 自社独自の受注管理や案件管理だけを、Webアプリとして作る
  • 両者の間は、CSVやAPIでデータを受け渡す

この方法なら、作る範囲を必要最小限に抑えつつ、業務の中心は自社に合った形にできます。ノーコードツールやkintoneを使っている場合の判断基準は、ノーコードで限界を感じたら?やkintoneで足りる?独自開発が向いている業務の見分け方もあわせてご覧ください。「業務システム」と「Webアプリ」という言葉の違いが気になる場合は、業務システムとWebアプリの違いとは?で整理しています。

自社専用のシステムを作る前に確認したいこと

  • SaaSを実際に試し、合わない部分を具体的に書き出したか
  • 合わない部分は、業務の中心か、周辺か
  • 業務の流れは固まっているか(頻繁に変わる段階ではないか)
  • 公開後の保守・改修を誰が担うか決まっているか
  • 数年単位で見たときの費用を比べたか

SaaSを試すときのチェックポイント

SaaSで足りるかを判断するには、実際に試してみるのが確実です。無料トライアルなどで試す際は、次の点を確認しておきましょう。

  • 実際の業務を一通り(登録から完了まで)再現できるか
  • 自社で使っている項目や帳票を、設定で表現できるか
  • 例外的なケース(取り消し、差し戻し、特別な料金など)をどう扱えるか
  • 権限の設定で、見せる範囲を業務に合わせて分けられるか
  • 他のツールや既存の仕組みと、データを受け渡せるか
  • 利用者が増えたときの料金と、プランの上限
  • データを書き出せるか(将来、別の仕組みに移る場合)

画面を眺めるだけでなく、実際の業務データ(個人情報を伏せたもの)で、数日分の業務を通して試すと、使いにくい点や足りない点が具体的に見えてきます。

自社専用で作る場合の注意点

  • 作る範囲を絞る:SaaSで足りる部分まで作らない
  • 保守の体制を決める:公開後の不具合対応や更新を誰が担うか
  • 引き継げる形で残す:ソースコードや資料、アカウントを自社で持てるようにする

自社専用のシステムは、自社で育てていける資産になる一方、保守の責任も自社にかかります。その前提で判断しましょう。

Tailboneの考え方

Tailboneは業務用Webアプリ・社内ツールを開発する会社ですが、SaaSで十分な業務まで作ることはおすすめしていません。今の業務と、合わない部分を伺ったうえで、自社専用で作るべき範囲があるか、SaaSを軸に足りない部分だけを補うのがよいかを一緒に整理します。費用は要件によって変わるため、内容に合わせて個別にお見積もりします。

よくあるご質問

SaaSの無料トライアルで、どこまで確認すればよいですか?

実際の業務データ(個人情報を伏せたもの)を使って、1日〜1週間分の業務を通しで試してみるのがおすすめです。画面を眺めるだけでは分からない「この操作が毎回手間になる」「この例外が処理できない」といった点が見えてきます。

自社専用システムにすると、担当者が辞めたときに困りませんか?

誰が保守できる状態にしておくかによります。ソースコードや設計資料が整理されていて、開発会社以外のエンジニアでも引き継げる状態で納品されていれば、リスクは小さくできます。発注前に、引き継ぎを想定した納品物について確認しておくと安心です。

SaaSと独自開発を組み合わせることはできますか?

できる場合があります。たとえば会計はSaaSを使い、自社独自の受注管理だけをWebアプリとして作り、CSVやAPIでデータを渡すといった構成です。連携の方法はSaaS側の機能によって変わるため、事前に確認が必要です。

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