業務別システム
案件管理システムを小さく作るには?最初に必要な機能と後回しにできる機能
案件ごとの進捗をExcelの一覧で管理し、細かいやり取りはチャットやメールで――多くのチームで見られる運用です。案件が少ないうちは回っていても、件数や担当者が増えると「この案件、今どうなっている?」という確認が増えていきます。案件管理の仕組みを小さく作るとき、機能より先に決めるべきことがあります。
案件管理がExcelとチャットで回らなくなるとき
- 案件の状況を確認するために、担当者に直接聞く場面が増えた
- Excelのステータス欄が更新されず、実際の進捗と合っていない
- 期限の近い案件や、止まっている案件に気づくのが遅れる
- 案件に関するやり取りがチャットに流れてしまい、後から探せない
- 担当者の不在時に、引き継ぎができない
これらは、案件の情報が「1か所にまとまっていない」「誰がいつ更新するか決まっていない」ことから起きる問題です。仕組みを作る前に、まずこの2点を決めることが重要です。
最初に決めるべきは「ステータス」と「更新する人」
案件管理の仕組みは、ステータスの設計で使いやすさが大きく変わります。ステータスの数が多すぎると更新されなくなり、少なすぎると状況が分かりません。
| ステータスの例 | この状態になる条件(例) | 更新する人(例) |
|---|---|---|
| 見込み | 問い合わせや紹介を受けた | 営業担当 |
| 見積提出済み | 見積書を送付した | 営業担当 |
| 受注 | 発注書・契約を受領した | 営業担当 |
| 対応中 | 作業担当者が決まり、着手した | 作業担当 |
| 完了 | 納品・検収が済んだ | 作業担当 |
| 失注・中止 | 案件が進まなくなった | 営業担当 |
上の表は例です。大切なのは、ステータスの名前だけでなく「どうなったらこの状態にするか」を一文で決め、更新する人をはっきりさせることです。このルールが曖昧だと、仕組みを作っても状況が正しく反映されません。考え方の詳細は社内ツール開発を外注する前に決めておくべき7つのことでも解説しています。
最初の版に必要な機能
案件管理の最初の版は、次の機能があれば業務を回し始められます。
- 案件一覧:ステータス、担当者、期限で絞り込みと並べ替えができる
- 案件詳細:取引先、内容、金額、期限、関連資料などの基本情報
- 担当者の割り当て:誰がその案件を持っているかが分かる
- ステータスの更新:決めたルールに沿って状態を変えられる
- 対応メモ・履歴:いつ、誰が、何をしたかを時系列で残せる
これだけでも、「案件の状況を1か所で確認できる」「止まっている案件に気づける」状態は作れます。
後回しにできる機能
| 機能 | 後回しにできる理由 |
|---|---|
| 見積書・請求書の作成 | 当面は既存の方法で作成し、案件に紐づけて記録するだけでも回る |
| 売上・粗利の集計 | CSV出力してExcelで集計すれば、当面は対応できる |
| ガントチャート・工程表 | 工程が複雑な業務以外では、期限とステータスで十分なことが多い |
| 期限の自動通知 | まずは一覧で期限順に並べて確認する運用から始められる |
| 取引先向けの進捗公開 | 社内の運用が固まってから、見せる範囲を決めるほうが安全 |
運用を始めてみて、実際に手間がかかっている部分から順に追加していくと、本当に必要な機能に費用をかけられます。進め方はWebアプリ開発を小さく始めるには?でも紹介しています。
他の業務とのつながりを見込んでおく
案件管理は、顧客管理、見積・請求、作業報告など、多くの業務とつながっています。最初の版でこれらをすべて作る必要はありませんが、将来つなげる可能性があるなら、最初に伝えておくと、データの持ち方を考慮して設計できます。
- 顧客情報は案件ごとに入力するのか、顧客の一覧から選ぶのか
- 見積書・請求書を将来この仕組みで作るか
- 作業時間や日報を案件に紐づけて記録するか
顧客管理との関係は顧客管理をExcelからWebアプリに移行するタイミングと進め方、見積・請求は見積書・請求書の作成をシステム化すべきか?、受注前の商談の管理は営業管理・商談管理を自社に合わせて作るには?で解説しています。
小さく作る案件管理の進め方
- 今の案件リストを見直す:使っている列、使っていない列、表記がばらばらな列を確認する
- ステータスと更新ルールを決める:条件と更新する人を一文で書く
- 最初の版を作る:一覧・詳細・担当・ステータス・履歴に絞る
- 一部のチームで試す:更新の手間や、一覧で見たい項目を確認する
- 既存の案件を移して切り替える:進行中の案件から移し、完了済みの案件は必要に応じて移す
案件管理を定着させるための運用
案件管理の仕組みは、ステータスが正しく更新されてはじめて役に立ちます。更新が滞らないよう、運用の面でも工夫が必要です。
- ステータスを更新するタイミングを、業務の節目(見積送付、受注、納品など)と結びつける
- 朝会や週次の会議で、案件一覧の画面を見ながら進捗を確認する
- 期限を過ぎた案件、長く止まっている案件を一覧で目立たせる
- 担当者が自分の案件だけを素早く確認できる画面を用意する
会議で画面を使うようになると、更新されていない案件がすぐに分かるため、自然と更新が習慣になります。仕組みを作るだけでなく、使う場面を作ることが定着の鍵です。
案件管理の相談前に用意したいもの
- 今の案件リスト(見本データ)と、使っている列
- 案件が受注から完了までどのように進むか
- 案件に関わる人(営業、作業担当、管理者、取引先)
- 将来つなげたい業務(顧客管理、見積・請求、日報など)
- 案件のおおよその件数と、同時に進行している数
案件の数が増えても使えるように
案件の数が増えると、一覧が長くなり、目的の案件を探しにくくなります。最初の版から、担当者・ステータス・期限での絞り込みと、完了した案件を一覧から外す仕組みを用意しておくと、件数が増えても使いやすさを保てます。
ステータスの定義から一緒に決めます
案件管理の仕組みづくりは、機能より先にステータスの意味と更新する人を決めるところから始まります。今の案件リストと、受注から完了までの流れを伺えれば、最初の版の範囲は具体的に見えてきます。要件が明確な場合、シンプルな構成であれば最短7日以内の初回納品を目指せます(要件確定後からの目安で、規模や内容により変わります)。
よくあるご質問
既製のプロジェクト管理ツールでは足りませんか?
タスク管理や工程管理が中心であれば、既製のツールで十分なことも多くあります。案件ごとの金額、取引先、独自の工程やステータス、社内の承認など、自社の受注業務に合わせた管理が必要な場合は、案件管理に特化したWebアプリが合うことがあります。
スマートフォンからも案件を確認・更新できますか?
Webアプリであれば、スマートフォンのブラウザから使えるように作ることができます。外出先で使う場面が多い場合は、スマートフォンで使う画面を優先して設計するとよいでしょう。
今のExcelの案件リストを取り込めますか?
取り込みは可能です。ただし、ステータスの表記や担当者名がばらばらな場合は、移行前に整理が必要です。新しいステータスの定義に合わせて、既存の案件をどのステータスに当てはめるかも決めておきます。