費用・見積もり
Webアプリ化の費用対効果はどう考える?手作業の時間から試算する方法
「Webアプリにすれば楽になりそうだが、開発費をかけるだけの価値があるのか分からない」。社内でシステム化を提案するとき、決裁者からまず問われるのが費用対効果です。正確な予測は難しくても、自社の数字を使えば、判断の材料になる程度の試算はできます。その考え方と、計算の枠組みを紹介します。
費用対効果の基本的な考え方
費用対効果は、同じ期間で次の2つを比べて考えます。
| 比べるもの | 含める内容 |
|---|---|
| 減らせる手間の価値 | 削減できる作業時間、減らせるミスへの対応、その他の効果 |
| かかる費用 | 開発費、毎月の運用費(サーバー・外部サービス)、保守・改修費 |
開発費は最初に一度かかる費用、手間の削減は使い続ける間ずっと続く効果です。そのため、1年、3年など、一定の期間で両方を合計して比べるのが一般的です。
手順1:手間がかかっている作業を書き出す
まず、システム化の対象になりそうな作業を書き出します。業務の流れの中で、転記、確認、集計、探す作業、連絡などに注目すると見つけやすくなります。書き出し方はシステム化の前に業務フローを整理する方法で紹介しています。
手順2:作業の時間を自社の数字で見積もる
書き出した作業ごとに、次の数字を見積もります。正確でなくても、目安で構いません。
【作業時間の見積もり(記入用)】 作業名: ・1回あたりの時間: 分 ・1か月あたりの回数: 回 ・関わる人数: 人 → 1か月あたりの時間 = 1回の時間 × 回数 × 人数 システム化した後の見込み: ・1回あたりの時間: 分(なくなる場合は 0) → 1か月あたりに減らせる時間 = 今の時間 − システム化後の時間
担当者に1〜2週間ほど、作業の回数とおおよその時間をメモしてもらうと、根拠のある数字になります。
手順3:時間を金額に置き換える
減らせる時間を、社内で使っている人件費の考え方(時間あたりの単価など)で金額に置き換えます。どの単価を使うかは、社内の基準に合わせてください。
試算の式
期間中の効果(金額)= 1か月あたりに減らせる時間 × 時間あたりの単価 × 期間(か月)
期間中の費用 = 開発費 + 毎月の運用費 × 期間(か月)+ 見込まれる保守・改修費
この2つを比べることで、どのくらいの期間で開発費を回収できそうか、おおよその見通しが立ちます。
手順4:時間に表れにくい効果も書き出す
費用対効果を作業時間だけで判断すると、システム化の価値を小さく見積もってしまうことがあります。次のような効果は、金額にしにくくても、具体的な場面として書き出しておきましょう。
- ミスへの対応:転記ミスや請求の誤りが起きたときの、謝罪や修正にかかる手間
- 属人化のリスク:特定の人がいないと業務が止まる状態の解消
- 対応の速さ:顧客への返答や、異常への対応が早くなること
- 情報の見える化:管理者が状況を確認するための問い合わせや会議が減ること
- 働き方:月末や締め日の作業の集中が緩和されること
試算で気をつけたいこと
一般論の数字に頼らない
「システム化で作業時間が何割減る」といった一般論の数字は、自社の業務に当てはまるとは限りません。社内の判断材料にも、補助金の事業計画などの説明にも、自社で測った数字を使うことが大切です。
- システム化した後の作業もゼロではない:入力そのものは残ることが多いため、減る時間を大きく見積もりすぎない
- 運用費を忘れない:毎月かかる費用も期間分を忘れずに含める
- 使われなければ効果は出ない:現場に定着させるための工夫も、計画に含める
費用対効果を上げる範囲の決め方
試算してみて費用対効果が合わない場合でも、範囲を見直すことで合うようになることがあります。
- 効果の大きい作業だけを、最初の版の対象にする
- 頻度の低い例外処理は、当面は手作業で対応する
- 既製のツールで足りる部分は、無理に作らない
開発費の決まり方は業務用Webアプリ開発の費用はどう決まる?、既製ツールとの比較は自社専用システムは本当に必要?、効果が出やすい業務の見つけ方は業務効率化に向いているWebアプリとは?で解説しています。
社内で説明するときのまとめ方
試算ができたら、決裁者や関係者に説明するために、次のような形でまとめておくと伝わりやすくなります。
【システム化の検討メモ(項目の例)】 1. 対象の業務と、今の課題 2. 減らせる作業と、その時間(自社で測った数字) 3. 時間に表れにくい効果(ミス、属人化、対応の速さなど) 4. かかる費用(開発費、毎月の運用費、保守・改修の見込み) 5. 比較した他の方法(運用の改善、既製ツールなど)と、選ばなかった理由 6. 最初の版の範囲と、次の段階の候補 7. 効果を確かめる方法と時期
5の「比較した他の方法」を入れておくと、なぜ開発が必要なのかの説明に説得力が増します。7の「効果を確かめる方法」は、導入後に振り返り、次の判断をするために役立ちます。
効果が出るまでの期間も考える
システムを導入しても、すぐに試算どおりの効果が出るとは限りません。使い方に慣れるまでの期間や、データの移行、旧来の方法との並行期間があるためです。
- 導入直後は、操作に慣れるまで一時的に作業時間が増えることもある
- 並行運用の期間は、両方の作業が発生する
- 使い始めてから改善を重ねることで、効果が大きくなっていく
試算の期間を決めるときは、こうした立ち上がりの期間も見込んでおくと、現実に近い判断ができます。
試算は「判断の材料」と考える
費用対効果の試算は、未来を正確に予測するものではありません。社内で判断するための材料です。前提にした数字と、その測り方を明記しておけば、導入後に実際の数字と比べて振り返ることができます。
補助金の事業計画で効果を説明する場合の考え方は、補助金申請前にWebアプリ開発の内容を整理する方法で解説しています。
効果の大きい範囲から、最初の版を考えます
手間がかかっている作業と、そのおおよその回数・時間を伺えれば、効果が出やすい範囲から最初の版を考えられます。費用は要件によって変わるため、範囲を決めたうえで個別にお見積もりします。社内向けの検討メモに使える形で、範囲と費用の考え方をご説明することもできます。
よくあるご質問
作業時間をどうやって測ればよいですか?
対象の作業を担当している人に、1〜2週間ほど、作業の回数とおおよその時間をメモしてもらう方法が手軽です。正確な計測でなくても、「1回あたり15分程度、1日に10回くらい」といった目安があれば、試算には十分役立ちます。
費用対効果が合わない場合は、システム化をやめるべきですか?
範囲を絞ることで、費用対効果が合うようになることもあります。効果の大きい部分だけを最初の版にする、既製のツールと組み合わせる、といった方法を検討してみてください。それでも合わない場合は、運用の改善で対応するのも一つの判断です。
開発会社に効果を試算してもらえますか?
計算の枠組みを一緒に考えることはできますが、作業時間や件数などの数字は、業務を行っている社内でしか把握できません。開発会社の一般論の数字ではなく、自社で測った数字をもとに判断することをおすすめします。